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BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

第3話 消えたアンナ act.41~50


スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.41]


クリス「よし、次は僕が行く。」

委員長「待って!」

クリス「なんだい?」

委員長「やっぱり危険だわ!アンナの機体が成功したからって、クリス君が成功するとは限らないでしょ?!」

クリス「それはそうだが……、このままアンナを放っては置けない。」

委員長「でも……。」

その時、神田が言った。

神田 「待て、クリス!!!」

クリス「なんだい?」

神田 「俺が行く!」

豪 「なんだって?!!!」

神田 「これは危険な仕事や。だから俺が行く。」

委員長「こんな時にふざけないで!」

神田 「いいや、ぶざけてへんで!失敗すると死ぬかもしれんのや!だから俺が行く。」

委員長「……。」

クリス「…………。」

豪 「……………。」





モニターに映った神田の表情は真剣だった。
クリスは目蓋を閉じて、

クリス「いや、いい。その気持ちだけで充分だ。」

と言った。
クリスは発進を決意した。
スロットルを引き、機体はカタパルトを滑って行った。

委員長「……。」

そして壁に吸い込まれた。
クリスの機体は消えた。爆発は起きなかった。

神田 「すげーーーーーー!!!」

豪 「次は僕が行く。」

委員長「いいえ、私が行くわ!」

豪 「危険だよ。僕が行く。僕に任せて!」

委員長「でも……。」

神田 「俺が行くで!」

豪 「いいや、発進は僕の方が慣れてる!」

神田 「なんや?!こんな時にそんな事言うんかいな?!」

豪 「生きてたら向こうで会おう。」

神田 「けっ!かっこつけよってからに!
ええわ!行けや!そうまで言うんやったらかっこつけさせたるわ!」

豪は笑みをこぼしてから、発進した。

機体が壁に吸い込まれて行く。委員長はまたも見て入られなくなって両手で顔を覆った。
だが、豪の機体も無事に壁に吸い込まれた。

神田 「よし、行けたみたいやな。次は俺が行く。」

委員長「いいえ……、私が……」

委員長は少し声が弱々しくなった。やはり壁に向かって突っ込む事が恐ろしいと感じ始めたようだ。

神田 「いいや、ここは男に任しとけ。俺はオナゴにいいかっこ見せたいから先に行く。」

委員長「あ。」

神田は委員長の事をオナゴと言った。

神田 「いいか、委員長。ビビって突入をしくじるんや無いで!俺が突入した後、しっかりついてきいや!」

そう言い残して神田機は発進した。
神田機もまた壁に吸い込まれて行った。






スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.42]


いつも騒いでいた神田までいなくなり、委員長は辺りが急に静まり返った気がした。
1人になった委員長はコントロールレバーを握り締めたままシート上で固まっていた。
そしていつまで経っても発進する様子は無かった。
ナターシャは心配になって声をかけた。

ナターシャ「小川さん!どうしたの?大丈夫?」

モニターをよく見ると、委員長の唇の色はやや紫色に変色し、顎が小刻みに動いているのが見えた。

ナターシャ「小川さん!」

委員長「行きます……。」

ナターシャ「やはり危険だわ!小川さん!貴方の精神レベルが少し低下しているわよ!」

委員長「行けます。クリス君も行きましたし……。」

ナターシャ「とにかく一旦降りて!心拍数が上昇してるわよ!」

しかし委員長は制止を振り切り、スロットルレバーを引いて発進した。

ナターシャ「小川さん!」

壁に向かってスピードを上げる小川機。

委員長「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!」

壁が迫って来た。委員長は思わず目をつぶって叫んだ!

ナターシャ「小川さん!」









そして委員長の機体も壁の向こうに消えた。









広い甲板からはスポルティーファイブの機体が全て消えた。

ナターシャ「……。」

郷田指令「行ってしまったか……。彼らの無事を祈ろう。」

矢樹 「オペレーター!指示した特殊通信回線を開け!」

オペレーター「わかりました。」

矢樹が指示すると、例の壁の表面の虹彩が揺らぎ始めた。
そして裂け目のような物が現れ、そこから光が漏れた。

郷田指令「あれが”向こう”との繋がりか?」

これで2つの空間にわずかな裂け目を作って通信が出来る筈だった。

オペレーター「反応がありません。」

郷田指令「なに?!」

オペレーター「追跡装置からも機影が消えました。」

郷田指令「なんだと……?!」

矢樹 「ある程度予想していた事だ。」

郷田指令「どうするんだ?これから。」

矢樹 「彼らに任せるしかない。スポルティーファイブ以外では向こうに行ける機体は無いからな。」







スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.43]


神田は自分の機体の中で目を覚ました。
気が付くと前方にもたれかかった自分の体を6点式のシートベルトが支えていた。

神田 「うう……。」

神田は慌ててコントロールレバーとスロットルレバーを握り直した。
機体はオートパイロットに自動的に切り替わって飛行を続けていた。
その為、速度は低速だった。

神田はキャノピー越しに前方を見た。
辺りは薄暗く、まるで泥水がかかっているような濁った印象を受けた。
月明かりでモノトーンの空が見え、雲の形が不自然でなんとも気味が悪かった。

神田 「なんや?この前、マッドサイエンティスト矢樹が使ったシミュレーションみたいな光景やな。」







ザーーーーーーーーーーーーーーー!



突然、激しい雨が大きな音を立ててキャノピーに激しくぶつかって来た。
雨水はなんとも言えない不気味な絵模様をキャノピー表面に作り出していた。

神田 「ううう……、気持ち悪い。」

しばらくしてピタリと雨は止んだ。
と、言うより雨の降っている空域を通過したようだ。
視界は開け、鋭く尖った山々が見えた。それらは鍾乳洞に生える岩のような質感をしていた。
細くて鉄の矢の矢尻のように尖った岩山だ。
それがまるで神田機をつかまえようとする巨大な手のように、空に向かって何本も突き出ていた。

神田は山にぶつからないように機体をひねる。
機体が大きくロールして傾く。その時、はるか下方に地面が見えた。
土と泥だらけのうねりのある地層が見え、何かおどろおどろしい印象を受けた。

そんな中、そこに街のような弱々しい光りが転々と灯っているのが見えた。
田舎のようで道は整備されていない。
ビルもあまり見受けられ無い。
農家のような感じの家が点在している雰囲気だった。
その家々には煙突があり、黒い煙が立ち昇っていた。






神田は何とも言えない気分になってそれを眺めていた。

神田「なんや、ここは?まるで田舎や。高層ビルは無いのかいな?いったいここはどこなんや?」

そこへ突然人の声がした。
それはヘッドフォンを通して神田に話しかけて来た。

神田 「うわあ!」

それは豪からの通信だった。

豪 「神田さん、なに驚いて……」







神田 「脅かすなや!マジ、ビビッたやないか!








スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.44]


豪が言い終わらない内に神田は怒鳴った。
豪は神田の大きな声に逆にビックリしていた。

豪 「神田さんこそ、声がデカイですよ。」

神田 「うるさいなあ。
そんでここはどこやねん?!」

上空はどこまでも灰色がかった空が続いていた。

豪 「たぶん…………、”向こうの世界”ですよ。」

神田 「ここがか?!」






その時、突然また人の声がした。
それはクリスからの通信だった。

神田 「クリス、脅かすなよ!」

クリス「大丈夫か?」

神田 「まあな。」

クリスの機体の後方には委員長も続いていた。



委員長「かんだあ~~~~。」




委員長は大きな声を出されて不機嫌だった。
しかし、その声はなんとなく弱々しかった。
委員長はその後いつものように言葉を続けられずに黙った。

神田 「今日の委員長は弱々しいのう。攻撃するなら今かな?」

豪 「神田さん!」

神田 「ところでクリスぅ~~~。ここは本当に”向こうの世界”か?」

神田はクリスにも質問した。

クリス「たぶん。でも何も確証はないけど。
計器類は一応正常のようだけど、ノアボックスとは交信できない。」

神田 「そうか。」

豪 「座標は元の世界といっしょなんだけど、周りに見える景色が全然違うね。」

クリス 「大気成分もずいぶん違う。光化学スモッグが発生しているようだ。」

神田 「”こうかがくスモッグ”?」

クリス「工場からの排煙で大気が酷く汚れた状態なんだ。」

豪 「確かに汚れてますね……。酷い色をしてます。」

クリス「街の発展度合いは現実の世界と比べて少ないようだ。
高層ビルがあまり無い。」

神田 「それは見てわかる。」

クリス「とにかく今いる辺りがちょうどアンナの軌跡に当たる座標だ。下りてみないか?」

神田 「下りるって、機体からか?酸素マスク要らない?」

豪 「短時間なら大丈夫だと思いますよ。気になるなら持って行ってください。」

神田 「あーーーー、それ着けてるとアンナちゃんと再会した時、不恰好に見える。」

豪 「じゃあ、やめますか?」

クリス「とにかく下りてみよう。委員長、大丈夫か?」

委員長「ええ……。」

しかし、委員長の声は弱々しかった。







スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.45]

4機は垂直に降下した。

クリスが指示して、それぞれの機体はだいぶ離れた位置に着陸した。
どうも皆の精神レベルが不安定なので、機体の接触事故の発生を考慮しての事だ。

クリス「では僕が先に機体から降りよう。大丈夫なら後から来てくれ。」

豪 「もし僕達が消えるような事があれば、やはり僕達はただのバーチャルシティーの”キャラクター”に過ぎなかったんですね。」

クリスはコクピット下部のハッチを開けて地面に降り立った。
クリスには異常が見られなかったので、その後、神田・豪・委員長がそれに続いた。
雨は降っていなかったが、地面は酷くぬかるんでいた。

神田 「まるで田んぼの真ん中に立ってるみたいやな。」

神田はそのぬかるみの中から足を引き上げた。ブーツにべったりと灰色の泥がついていた。

クリス「ここはアンナといっしょに行った街と同じ座標だ。」

神田 「えーーーーーーーーーーーーー!ここが?!」

豪 「時間はまだ午後3時頃ですよ。暗いですね。夕方か日没直前みたいな暗さです。」

神田 「まったくやな。ところで委員長!”乗り物酔い”は直ったのか?」

委員長「乗り物酔いじゃない!」

しかし、委員長はその後言葉が続かなかった。

神田 「おーーーー、弱々しい委員長なんてらしくもない。今なら倒せるかも!」

委員長「がーーーーーー!!!」







クリスは座標を元にしてアンナの軌跡の終点の座標を目指した。

すると………、
田舎なのに、なんとそこには真新しいニュータウンが見つかった。
例の白いニュータウンである。
不気味なくらいのモノトーンな世界に建つその白さは際立って見えた。建物はまだ新しい。

その正面には教会があった。これは現実世界のニュータウンには無かった建物だ。

豪 「教会?不似合いですね。街の入り口にこんな大きな教会があるなんて。」

クリス「ああ、それに人気が無い。」

教会は古い大聖堂のようなデザインで、鋭利な屋根が空に突き刺すように何本も伸びていた。
豪は教会の周りに見える建物に目をやった。

豪 「ここは普通のニュータウンじゃないようですが?
どうも人が住んでいる家々が並んでいるようには見えません。
なにかの施設が固まって出来たような感じです。建物にはあまり窓が存在してません。」

クリス「確かに家の形には見えない。何かの施設のように見える。」

神田 「なんだろうなあ?」

クリス「とにかく一番上まで登ってみよう!」





全員、上に向かって皆で急いだ。例の大きな広い階段があったのでそこを駆け上がった。
しかし、委員長は本当に乗り物酔いみたいになっている。
その内、地面にへたり込んでしまった。

クリス「委員長といっしょにいてくれないか?僕は先の方に行く。」

豪と神田に委員長の介抱を頼んで、クリスは先を急いだ。

神田 「おおい!待てやクリス!」







スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.46]


クリスは1人1番上の建物を目指した。

頂上付近には例の3階建ての建物があった。
そして、その向こうには……、

クリスはそこへ回り込んだ。

やはりそこには……、想像通りの物があった。
”家”である。
何本もの高い植木に囲まれており、その植木の枝の向こうまで行くと、家の壁にはちゃんとした窓がありカーテンも見えた。
そのカーテンは女性が選んだようなデザインで、シックで地味なレース模様のあるカーテンだった。
カーテンを通して、室内からは温かそうな光が漏れていた。

クリスがやや離れた位置からそっと中を覗くと、1人の女性が奥に立って料理をしているのが見えた。
その女性は少し歳を取っていて、母親のようなイメージに見えた。
彼女は自分が料理をした物を手前のテーブルの方に運んで来た。
クリスがテーブルの方に目を移すと………、そこの席には1人の少女が座っていた。
その顔はアンナだった。

クリス「(アンナ!)」

クリスは思わず心の中で叫んだ。

アンナはいつも通りのポーカーフェイスだったが、今の表情はどちらかと言えば穏やかで、楽しそうにも見えた。アンナはいつも険しい表情を崩さない女の子だ。それがこのような表情をしているのは珍しい。

クリス「(アンナ……、家にたどり着けたという事か?ここが君の家という事なのか?)」

その時、クリスは不意に自分の肩に手をかけられた。
ハッとして振り返ると………、なんとそこにアンナがいた。

クリス「アンナ?!」

アンナはとっさにクリスの唇を手で塞いだ。
そして自分の唇の前に指を一本立てて、クリスに静かにするように合図をした。

クリスが了解すると、アンナはゆっくりクリスの唇に当てた手を退けた。
アンナはなぜか悲しげな表情をしていた。

アンナ「……………………。」

それからアンナはクリスに自分についてくるように手招きして、その”家”から離れた。





家の敷地から離れた植え込みの木の影までクリスを連れて行った。
そして2人は”家”の中の者から見えないようにそこに身をかがめた。

クリス「アンナ、あれは誰だ?」

アンナ「もう1人の私。この世界の。おそらくそうだわ。」

クリス「君と瓜二つだ。」

アンナ「そうね。でも向こうにはママがいるわ。私にはいない。」

クリス「あそこにいる少女は君そのものじゃないのか?
どちらが本体か知らないが、どちらかがきっとマスターだと思う。」

アンナ「”マスター”?
向こうはママがいる。だから向こうが本物だわ。私はコピーに過ぎないのかも……。」

クリス「そういう意味で言ったんじゃない。

ところでアンナ、この世界がどこだか知ってるかい?」

アンナ「ええ、以前矢樹博士が言ってた”向こうの世界”だと思うわ。」

クリス「ああ、その通りだ。
僕らはそう思って、ここまで君を救出に来たんだ。
[タイムトリップ2100 リアル]に潜った後、君はどうなった?あれから、あのカプセルの中で何があった?」

アンナ「わからない。正確には覚えていないわ。でも……。」

クリス「でも?」

アンナ「[タイムトリップ2100 リアル]中で、ここと同じニュータウンに来て、それから気が遠くなって……、次に意識が戻ったらこの近くにいたの。」

クリス「なぜ、バーチャルシティーからここに来れたのだろう?」

アンナ「わからないわ。」

クリス「つながっていたという事かな?」

アンナ「さあ?」

クリス「とにかく、ここを出よう。ここは別世界だ。僕達がここに留まっているとこの世界からどんな影響を受けるかわからない。」

アンナ「ええ。」





スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.47]


そこへ……、
空から巨大な影が下りて来た。
頭上を見ると、見覚えのあるヒューマノイド型の機体があった。
白い機体……、レイドのザークだった。

クリス「ザーク!」

クリスは驚いた。

クリス「ここにもザークがいるのか?!」

突然現れたザークにクリスとアンナはその場から逃げ出した。
ザークはアンナの”家”のすぐ近くへ着地した。
その時の重みで、アンナの”家”の壁がわずかに崩れた。
”家の中にいるアンナ”叫び声をあげているのが見えた。


クリスは立ち止まって、振り返った。
「”家の中にいるアンナ”が危ないのではないか?」と思ったのだ。
しかし、なぜかザークは家を攻撃せず、クリスらの方に銃口を向けた。

クリス「走れ!」

クリスはアンナをうながした。
2人は階段を走って下り始めた。
下りる途中に周囲に目をやりながら周りを見たが、神田・豪・委員長の姿は見つけられなかった。

クリス「どこかに隠れたのだろうか?」

その時、アンナは階段につまづいて転ぶ。
ザークはそのアンナに掴みかかろうと思ったのか、歩いて接近して来た。
そしてかがんでアンナの方へ手を伸ばそうとした。

ババババババ!

そこへ上空から神田機が攻撃して来た。

ババババババ!

だが、クリス達から離れた場所を狙った為、弾はザークに命中しない。
しかしその隙にクリスはアンナの手を握って起こした。

クリス「今だ!逃げるんだ!アンナ!」

ババババババ!

神田機、続けてバルカンを撃つ!

豪 「ぜんぜん当ってませんよ!」

神田 「これ以上は無理や!アンナちゃんらに流れ弾が当ってしまう!」

ザークは通り過ぎた神田機を射撃した。弾は神田機のシールドの表面をかすめた。
その後、ザークは狙いをクリスらに戻した。
豪はそれを見て取った。

豪 「ヤバイ!僕も行きます!」

羽山機も攻撃を開始!

ババババババ!

ザークはそれをライフルの射撃で応戦した。






スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.48]


機体にシールドを張って、攻撃をかわす豪。
次にザークはのろのろと上空を飛んでいる委員長の機体に目を付けた。

神田 「やばい!委員長!スロットルを引かんかい!狙われとるで!」

モニター越しに大声で呼ばれて委員長はやっと目を覚ます。
しかし、まだ半分寝ぼけた状態なのでコントロールレバーを不用意に引いてしまう。

神田 「アホう!それやない!引くのはスロットルレバーや!」

委員長、機体が傾き過ぎて失速しそうになるが、なんとか立て直す。
その後やっとの思いでスピードを上げるが、すでにザークに照準を合わされていた。

ピーーーーーー!(ロックオンの警告音)

神田 「委員長!シールドや!!!
シールドを張らんかい!ロックオンされとるで!」

委員長「え?」

しかし委員長の反応がいつもと違って鈍い。

そこへ……、

バババババババ!

クリス機がザークに向けてバルカンを放った。
クリスは自分の機体に搭乗できたのだ。
後方からはアンナの機体もやって来た。

クリスはバルカンを敵に浴びせた後、

クリス「ここは逃げよう!」

と言った。

神田 「ドッキングして戦わんのか?」

豪 「ここはいつもの世界と違います。逃げる方が賢明です。」

神田 「しかし、敵に後を見せて逃げる事になるで。危険や!ザークは追って来るに違いない!」

クリス「とにかく、今は逃げてみよう!それが駄目だったら他の方法を考えよう!
全機、敵から遠ざかってくれ!」

しかし、その時委員長が正気を失いかけた。
倒れこむように前のコントロールレバーに覆いかぶさる。

神田 「委員長!」

委員長は気絶してしまった。

豪 「委員長!」

神田 「ヤバイで!委員長の機体が狙われる!」

そこで神田機と羽山機が委員長の援護に回った。

クリスはザークを攻撃した。






スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.49]


アンナ 「ここの空間はやはり何か違います。元の世界のようにはいきません。
スポルティーファイブはこの世界ではもともとよく動かないものかも知れません。
ここからの脱出方法は?」

クリス「矢樹博士が連絡してくれる筈だった。だが通信は通じない。
もしもの場合は君に頼るように言われた。
メインコンピューターに矢樹博士が書いた”帰り方”のマニュアルが入っているからそれを見てくれ。そこに書いてある計算を君にしてもらいたい。」

アンナ 「わかったわ。」




クリスとアンナが通信している間も豪と神田は必死に援護を続けていた。

アンナ「ではドッキングしてください。その後、ここから脱出するための計算に入ります。」

クリス「よし、こうなったらドッキングした方がいいだろう。君は操縦しなくてよくなるから、計算に集中できる。
委員長の機体もこのままだと危ない。」

クリスは各機に通信した。

クリス 「全機に次ぐ、今からドッキングする!」

神田 「えーーーーー!さっきはドッキングせんと言うたやないか?!」

クリス「予定が変わったんだ。全機ドッキングシークエンススタート!」

豪 「了解!委員長の機体をオートパイロットに切り替えます。」

神田 「ドッキングしても委員長が気絶してたら、スポルティーファイブはパワーが出んのと違うか?」

クリス「今からアンナが脱出法の計算をしてくれる。それまでの間、時間稼ぎをするだけだ。」
豪 「わかった。やりましょう!!」

クリス「全機上昇!シールドオン!各機、ドッキングフォーメーションへ!」

神田・豪 「了解!」

クリス「全機シンクロ開始!」

豪 「シンクロスタンバイ。オートパイロットへ切り替え。
全機姿勢制御エンジン噴射。シールド展開!」

5機の機体は上空で接近。見事にドッキングを果たす。


クリス「ドッキング成功!」








スポルティー・ファイブ 第3話 消えたアンナ [act.50]


神田 「ふう、これで一安心や、委員長!もう寝といても大丈夫や!」

豪 「委員長は意識がありません。」

クリス「豪君!ミサイルの方を頼む!僕はライフルを撃つ!」

神田 「シンクロ率は悪いで。動きに注意しいや!」

スポルティーファイブのライフルはザークに向かって発射された。

ババババババババ!




攻撃が始まった。
アンナはあらかじめセットされていたDVDの中身を開いた。
画像が出て来て、そこに矢樹の姿が映った。

矢樹 「アンナ、脱出方法を教える。
用意した計算式があるから、それを埋める様に計算を行ってくれ。

位相空間の座標計算には充分注意する事。
各機のテレメトリーの数値をよくチェックして、それが正しい数値を表しているかどうか自分で判断しくれ。
そっちの世界の計器の表示が、こっちの世界の物と同じだと言う保証は無い。

その世界の”出口”つまりゲートは重力の特異点に存在する。そこを探し出せ。
スポルティーファイブのシステムを使ってゲートに突入する。
その方法ではレッドノアに備えている転移装置のように高い成功率は望めない。
充分注意してくれ。

空間プログラム弾に座標とその計算式を入れ込み、重力の特異点に打ち込め。
そうすれば”ゲート”が開くはずだ。

ゲートが開いたら、
特殊なシールドを張って、すぐにスポルティーファイブの機体で突入しろ。
成功すれば元の空間に出られる。
頼んだぞ。」

アンナは直ちにキーボードを叩いた。そして計算式に入力を始めた。

カシャ、カシャ、カシャ、カシャ……。







豪 「まもなく、ミサイルは全弾使い切ってしまいます!」

クリス 「ライフルの残弾はまだある。しかし照準が合わず、敵に命中しない。」

神田 「委員長が元気なら、もっとスポルティーファイブは活躍出来るんだがな……。
アンナちゃんは今ライフルの照準計算どころじゃないし…。」

豪 「神田さん!貴方がやってください!」

神田 「へっ?俺?俺が計算を?俺は数学苦手なんだよ!」

豪 「はあ?今そんな事言ってる場合ですか?!!」

クリスはモニターでアンナの姿を見つめる。

カシャカシャカシャカシャ……。

一心不乱にキーボードを叩くアンナの姿が映っていた。






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